ゴイアニア被曝事故とは?ブラジルで起きた事件の概要や光る粉!

ゴイアニア被曝事故とは?事件の概要をご紹介!

ゴイアニア被曝事故とは?ブラジルで起きた事件の概要や光る粉!

ブラジルのゴイアニア市で起きた「ゴイアニア被曝事故」は、放射線や放射能にまつわる事故や事件の中でも、危機管理の問題や被曝者数の多さなどから、繰り返してはいけない事件として知られています。

そして、ゴイアニア被曝事故は、ゴイアニアのみならず、ブラジル全域や、さらには世界全体にも大きな影響を与えた事件でしょう。

ゴイアニア被曝事故の概要とは?

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1987年の9月にブラジルで起こった事件が、ゴイアニア被曝事故です。そしてこの事件は、放射線や放射能の恐ろしさを物語る事件でもあります。その事件の一連の流れを確認してみましょう。

ゴイアニア放射線病院が舞台

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事件は、ブラジルにあるゴヤス州の州都、ゴイアニア市にある「ゴイアニア放射線病院」から始まります。

事件が起きた当時、この病院はほかの場所への移転が決まっていました。そのため、旧病院である建物は、ゴイアニア被曝事故が起きた当時は廃病院として放置されていたようです。

二人の泥棒が起こした事故

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そして、その廃病院に、地元に住んでいる泥棒二人が訪れます。彼ら二人は、廃病院には高価に売れるスクラップがあると聞いて盗みに入ったようです。

そして廃病院には、様々な器具は放置されており、その中には放射能と放射線を利用した医療器具の放射線照射装置も置いてありました。

なぜ放射線照射装置が廃病院に放置されていたのかというと、病院と地元自治体が装置の所有権を巡って揉めていたからのようです。

放射線照射装置を分解

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そして、泥棒二人は、放射線照射装置を発見してしまいます。二人は、それが放射能や放射線に関わる危険なものとは知らずに、売却用のスクラップを得るために解体します。

光る粉「セシウム137」を発見

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分解をすると、泥棒二人は放射線照射装置の中から厳重に保護されたパーツを発見します。それは、放射能を遮蔽するために厳重に保護されていた装置だったのです。

しかし、泥棒二人はそれに気づかず、放射線や放射能を遮蔽する鉛の装置を解体し、線源装置を取り出します。その線源装置には、暗い場所で蛍光塗料のように青色に薄く光る粉「セシウム137」という放射性物質が詰められていました。

さらに、線源装置を取り出すだけでなく、興味をもった泥棒の一人が、線源装置に穴を開けて、中からセシウム137を取り出したようです。

しかし、その粉には価値がないと踏んだ二人は、鉛で出来た遮蔽装置だけを業者に売りました。これらの行動は、9月の10日から18日までに行われたようです。

売った業者が周囲に被害を広げる

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18日には、泥棒二人から業者の手元に遮蔽装置が売られています。この段階ではまだ周囲に放射能による被害は広まっていません。

しかし、売られた遮蔽装置にはまだセシウム137が付いており、それに気づいた業者は面白がってその粉を自宅に持ち帰ります。そしてその業者は、青白く光輝く粉を、放射能をもった物質とも気づかずに家族や知人に自慢します。

その結果、18日から21日までの三日間を掛けて、その粉を家族や知人に配ったり、さらには肌に塗って遊んだりしていたようです。

そして、配られた家族や親戚、友人たちもまた他の人に配り、事件の影響は水面下でどんどんと広がっていき、知らぬ間に、放射能は人々の身体を蝕んでいきました。

ゴイアニア被曝事故の発覚と経緯とは?

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9月10日から始まった放射能に関わる恐ろしい事件であるゴイアニア被曝事故ですが、どのように発覚したのでしょうか。

放射線被曝は人間に大きな影響を与えます。その影響が身体に明らかになってきたころから、徐々に事件は明るみになっていきます。

業者の妻がセシウム137を保健当局に届ける

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まず、青い粉が危険なものであると気づいたのは、放射能を家に持ってきた業者の妻です。家にセシウム137が持ち込まれた3日後である9月21日には、彼女は下痢と嘔吐で酷く衰弱していました。

青白く輝く粉が家に着てから、自分だけでなく家族全員の身体に異変が起きていると気づいた妻は、ブラジルの保健当局に粉を届けます。

医師は妻を熱帯病病院に

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保健当局の医師は、まずは妻への治療を最優先にするべきだと判断し、彼女をブラジルの熱帯病病院に向かわせます。まさか彼女の体調不良が放射能によるものだと思わなかった医師は、彼女がブラジルのような熱帯で流行する類の病気だと判断したのです。

そして恐ろしいことに、業者の妻が持ってきた粉は保健当局に放置されます。放置されている間にも、青白く輝く粉、セシウム137は、放射能と放射線でその場にいる人のことを蝕み続けいていました。

その頃、熱帯病病院には、業者の妻と同様の症状を訴える患者が多数いました。そして一人の医師が、「患者の症状は病気ではなく、放射線被曝によるものなのでは?」と考えます。

そして、たまたまブラジルのゴイアニアに居合わせた放射線医学専門家に相談し、ゴイアニア被曝事故の発覚へと近づいていきます。

線量計が振り切れていた?

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相談を受けた専門家は、放射線を計る線量計を持って、保健当局に調査しに行きます。しかし、保健当局の建物の前で線量計は振り切れてしまうのです。

線量計が故障したと思った専門家は、新しい線量計を用意しますが、それも振り切れてしまい、計測不可能な程の放射線源が保健当局の建物内にあることが判明します。

249人が被曝していた

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恐ろしいまでの放射線源が保健当局の建物内にあると気づいた専門家は、避難の指示と通報をし、関係者に事情聴取を始めます。そして、セシウム137を配った業者の解体工場や泥棒の自宅を調べると、そこも計測不能なほどに放射線汚染がされていることが発覚するのです。

放射線による被害がゴイアニア市内のみならずブラジル全体に広まる前に、ゴイアニアの住民12万人を隔離、検査を行った結果、249人が被曝していることが判明しました。

ゴイアニア被曝事故のその後

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ゴイアニア被曝事故は、泥棒や業者、そしてその家族や親戚や友人のような当事者たちはもちろん、ブラジル全体にも大きな影響を与えました。

計4人が死亡

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ゴイアニア被曝事故で被害にあった249人の内、業者の妻と姪、そしてセシウムを取り出す作業を担当した、業者の従業員2人の計4人が、放射線による障害で亡くなりました。

さらにその遺体が入れられた棺は、鉛で覆われた上に、墓地の隅にコンクリートで作られた墓に埋葬されました。

廃病院で放射線照射装置を解体した犯人の二人にも、大きな放射線障害が残っています。その結果、右腕の切断や、手の指の切断などをすることになったようです。

汚染除去作業が行われる

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放射線による汚染は、人間だけに影響を残したわけではありません。計測不能なまでの放射線が計測された泥棒の家、業者の家、そして業者の工場など、多くの建物が解体されました。

それらの建物があった土地は今でも空き地として放置されており、ゴイアニア被曝事故の残した被害の大きさや影響の大きさを物語っています。

表土の入れ替え

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さらに、建物の解体のみならず、汚染されたと判断された地域の表土の入れ替え作業も行われました。しかし、この作業は現代の水準で考えると不十分なものなのではないかと考えられています。

病院の経営者の問題意識の低さ

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また、放射線照射装置を放置していた、病院の経営者の問題意識の低さも浮き彫りになりました。ブラジルの貧困地域では、盗難や廃品の泥棒は日常茶飯事の出来事です。

それにも関わらず、廃病院を盗みに入られるような状態で放置していたことや、そこに放射線照射装置を放置していたことが問題視されました。

この結果は世界的にも影響を与えています。ゴイアニア被曝事故以降、放射線照射装置のトレーサビリティが厳重化されました。

ブラジル全体への風評被害

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ゴイアニア被曝事故が起きた1987年は、世界的に放射線への恐怖心が高まっていた時期です。なぜなら、前年の1986年に、全世界を震撼させた「チェルノブイリ原子力発電所での事故」が起きていたからです。

こういった背景もあり、ゴイアニア被曝事故は、ゴイアニアのみならずブラジル全土にも風評被害を与えました。

事件後、​ブラジルの農産物は価格が50%も減少。さらにブラジルの工業製品の価格も40%近く減少したようです。

また、ゴイアニア市民は公的機関の「非汚染証明書」が無ければ、ホテルもタクシーも使えないという扱いを受け、それに対して反発した住民たちが、除染作業や放射線測定作業の妨害を行ったという記録も残っています。

ゴイアニア被曝事故の類似事故

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ゴイアニア被曝事故が起きた一番の原因は、「問題意識の低さ」でしょう。もし放射線病院の経営者が、廃病院をきちんと管理をしていたり、放射線照射装置を放置していなければ起きていない事故でしょう。こういった背景をもった被曝事故は、世界中で散見されます。

千葉市のイリジウムによる放射線被ばく事故

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1971年9月に起きた放射線事故です。千葉県の造船所の構内で、作業員が非破壊検査用の強力な放射線源「イリジウム197」を広い、好奇心からズボンのベルトにさして下宿に持ち帰ります。

その結果、計6人が被曝しています。拾った本人は、急性放射線障害が出るほか、指の切断を余儀なくされました。

中国の殺菌装置による放射線被ばく事故

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1990年6月25日、中国の上海市で起きた放射線被曝事故です。上海市にある放射線医学核医学研究所では、化粧品や医療用製品の殺菌を、コバルト60線源を用いて行っていました。

しかし、担当者が規則に従わない手順で作業したり、作業員が誰もアラームの付いた線量計を持っていないなどの、ずさんな作業により、計7人が被曝しました。そしてその内の2人は、様々な治療もむなしく亡くなっています。

この放射線被曝事故も、ゴイアニア被曝事故同様に、放射線防護や安全性を軽視したが故の起きた事故でしょう。

デーモン・コア事故

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「デーモン・コア事故」は、アメリカのロスアラモス研究所で1945年と1946年、二度に渡って起きた事故です。デーモン・コアとは、約6kgの未臨界プルトニウムの塊で、ずさんな実験の結果、二度に渡って臨海状態に達して核分裂し、実験の実行者である博士を2人殺しています。この事故も、安全性を度外視した実験によって起きた放射線被曝事故でしょう。

放射線とは?

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日本でも、2011年に起きた福島原発の事故以来、放射能や放射線という言葉に敏感になっています。しかし、ただ「恐ろしいもの」という知識だけが先行し、一体どういった仕組みなのかや、具体的にどういった点が恐ろしいのかを分かっている人は少ないでしょう。

放射線の仕組み

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放射線とは、放射性物質から放たれる、目に見えない粒子や電磁波のことを指します。放射性物質と放射能、そして放射線の関係性は、よく懐中電灯に例えられます。

懐中電灯から放たれる光に該当するのが放射線で、その光を放つ力、つまり電池に該当するのが放射能、そして、懐中電灯本体に該当するのが、セシウムやプルトニウムのような放射性物質です。

さらに、懐中電灯が徐々に電池切れになるように、放射性物質も徐々にその源である放射能を失い、安定した物質に変化します。しかし、その放射能が完全に失われるまでの期間は物質によって異なりますし、モノによっては何年もの期間が必要になります。

放射線は身近な存在

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放射線は、実は人間にとってとても身近な存在です。例えば、宇宙から地球に降り注ぐ「宇宙線」と呼ばれるものは、放射線の一部ですし、自然界にも多くの放射性物質が存在しています。

また、それを有効活用することもあります。病院にあるレントゲンであったり、中国上海の事故で用いられていた製品の殺菌など、様々な現場で利用されているのです。

放射線は人間にどういった影響を与えるのか

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身近な存在である放射線や放射能、放射性物質ですが、有効に使えるのと同時に危険な存在でもあるのが、ゴイアニア被曝事故やその他の事件から分かります。

放射線を浴びる量には規定があり、その規定を超えた量を浴びてしまうと、身体に様々な障害が現れます。それは、放射線が「人間の細胞を破壊」してしまうからです。

細胞が破壊されると、細胞分裂が出来なくなってしまったり、異常な細胞が身体に出来てそれが増殖したりします。そうすると、下痢や嘔吐のような症状から、やけどのような症状が表れます。

さらに、短期的な障害のみならず、将来的な障害も与えるのが放射線による細胞への攻撃の特徴です。例えば、放射線によって出来た異常のある細胞が出来、それが増殖すると、癌や白血病に繋がります。

さらに、当人のみならず、生まれてくる子供に奇形児や障害児が多くなる、という次世代への影響も起きてしまいます。

正しい知識を身につけること

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放射能や放射線、放射性物質という存在は、確かに危険も孕んでいる一方で、日常生活に即した、非常に近い存在でもあります。

ただなんとなく「危なそう」といった知識しか持ち合わせず、放射線の事故が起きた場所に住んでいた人や、その影響を受けた人を批判してしまうといったことをしないようにも、放射能に対して正しい知識を身につけましょう。

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